桜ジャパンプロダクツ株式会社の弁理士のヒロと申します。
商標登録出願のご相談、ご依頼が増えてきたので、以下、商標権(商標登録)とは何なのか、簡単にご説明します。
(1)商標権(文字商標とロゴ商標)の例
商標権について、以下の日清食品のヒット商品であるカレーメシの文字商標とロゴ商標の商標権(商標登録)を例にして説明します。
これらの商標権の権利者は日清食品ホールディングス株式会社です。
日本で商標権(商標登録)を取得するためには日本の特許庁へ商標登録出願をすることが必要です。
特許庁の審査官が審査のうえ、一定の条件をクリアすれば、その商標が商標登録を受ける、つまり出願人(※上記の例なら日清食品ホールディングス株式会社)が商標権を取得することができます。
(2)商標と区分、指定商品(指定役務)について
商標登録出願の際には、商標登録を受けたい商標と、区分、また指定商品を指定する必要があります。
以下の文字商標の商標権(商標登録)なら「カレーメシ」が商標登録を受けたい商標です。
また、第29類と第30類が区分です。
そして、第29類の指定商品から「即席カレー,レトルトカレー,カレーのもと」、第30類の指定商品から「カレーを加味した即席米飯,カレーを加味した調理済み冷凍米飯,カレーを加味した冷凍米飯」を指定しています。
ここで、区分ですが、要するに商品や役務(サービス)の分類のことで、商品の区分が第1類から第34類まであり、役務(サービス)の区分が第35類から第45類まであります。
商品及び役務の区分解説〔国際分類第11-2022版対応〕
上記商標権(商標登録)の第29類は「動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物」で、第30類は「加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料」です。
そして、以下にの審査基準に示すように、各区分にはさらに細かく複数の指定商品が含まれており、この中で指定商品を選択することになります。
ただし、ここに記載の指定商品や指定役務はあくまでもその一例なので、ここに記載の指定商品や指定役務を元にして、新たに指定商品や指定役務を指定することも可能です。
なお、上記商標権(商標登録)の指定商品の「カレーを加味した即席米飯,カレーを加味した調理済み冷凍米飯,カレーを加味した冷凍米飯」はいずれも以下の審査基準には記載されておらず、新たに指定したものになります。
「商品及び役務の区分」に基づく類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2023版対応〕
(3)商標権(商標登録)があると何ができるのか?
もし皆様がある商品やサービスについて商標権(商標登録)を有しているとすると、商標権の権利者である皆様だけがその商品やサービスに対して、その登録商標とこれに類似する商標を使用できる権利が与えられます。
たとえば、第三者がその登録商標(または類似商標)をその商品やサービス(または類似商品や類似サービス)に対して使用したとすると、その行為は皆様の商標権の侵害となるため、皆様はその第三者の使用行為をやめさせることができます。
難しい言葉で言うと、皆様には差止請求権が得られ、もし上記のような商標権侵害が発生すると、裁判所に対し、その侵害行為の差止請求の訴えを起こすことが可能です。
(4)商標権(商標登録)の侵害とは?
以下の商標権(商標登録)を例にして第三者が何をしたら、この商標権の侵害になるのか、説明します。
上記したように、第三者がその登録商標(または類似商標)をその商品やサービス(または類似商品や類似サービス)に対して使用したとすると、その行為は商標権の侵害となります。
上記の商標権の登録商標は「カレーメシ」なので、第三者が「カレーメシ」を使用することはもちろん、「カレーメシ」に類似する「カレー飯」、「Curryメシ」などの類似商標を使用することも商標権侵害となる可能性があります。
ちなみに商標の使用とは、商品にその商標を記載して販売する、などの行為のことです。
ここで「商標権侵害となる可能性」と言ったのは、第三者の登録商標(または類似商標)の使用行為だけでは商標権侵害となるかどうかは決まらず、第三者の商品が上記商標権(商標登録)の指定商品と同じかどうか(または類似するかどうか)によって初めて決まるためです。
上記商標権(商標登録)の指定商品は「即席カレー,レトルトカレー,カレーのもと」、「カレーを加味した即席米飯,カレーを加味した調理済み冷凍米飯,カレーを加味した冷凍米飯」です。
そのため、第三者が「カレー飯」をインスタントカレーのような「即席カレー」に記載して販売すれば、もちろん商標権の侵害になります。
では第三者がたとえば「Curryメシ」を「即席ハヤシライス」や「レトルトハヤシライス」に記載して販売したらどうでしょうか?
「Curryメシ」が登録商標「カレーメシ」に類似するのは上記した通りですが、「即席ハヤシライス」や「レトルトハヤシライス」は指定商品の「即席カレー」や「レトルトカレー」に類似するため、商標権侵害となると思います。
次にカレーメシのロゴ商標の商標権(商標登録)の場合ですが、これも基本的には文字商標の商標権の侵害と同じ考えで、第三者がその登録商標(または類似商標)をその商品やサービス(または類似商品や類似サービス)に対して使用したとすると、その行為は商標権の侵害となります。
ただ第三者が使用するロゴ(商標)がこのカレーメシのロゴ商標(登録商標)と類似するかどうかは、一般消費者がこれらを見比べて似ていると思うかどうかで、判断すると良いかと思います。
要するに一般消費者(つまり皆様も)が第三者が販売するたとえばインスタントカレーに記載された使用するロゴ(商標)を見たときに、「あれ?これは日清の商品かな?」と思うのであれば、それらの商標は似ている、つまり類似すると考えて頂ければ結構です。
(5)Amazonブランド登録について
上記した日清食品のカレーメシのように、よほどのヒット商品で、他社に真似されては困るといった商品であれば、これの商標権を取得して、そのブランドを守り、ブランド力を向上させることが大事になります。
ところがこのようにお金をかけて商標権を取得してまでブランドを守るというのは、それだけの売上規模の商品やサービスを提供‘するそれなりの規模の企業(日清食品のような超大企業とまでは言いませんが)にしか関係の無い話でした。
消費者にそれなりに知れ渡っている商品やサービスでないと、他の企業はその商品やサービスの商標(ブランド)を真似する意味が無いためです。
ただし、仮に皆様の会社が自社の商標権(商標登録)を取得しなかった場合で、かつ他社が同じ商標(または類似商標)の商標権(商標登録)を取得してしまうと、逆に皆様の会社がその他社の商標権侵害となるおそれがあります。
このような事態にならないように守りの観点から、それなりの規模の会社を目指すのであれば、自社の商標権(商標登録)を取得すべきではあります。
しかし、ここで皆様はAmazonブランド登録をご存じでしょうか。
Amazonでは現在、「ブランドを保護して、安心をお届けします」というコンセプトの下で、Amazon出品者の知的財産(商標権や特許権など)を登録し、ブランドを保護することを推奨しています。
このAmazonブランド登録により、メーカーやオリジナルブランド(いわゆるOEM)を出品する皆様は以下のページで記載するメリットが得られます。
上記のAmazonブランド登録のメリットが非常に大きいもので、これは大企業には限らず、むしろ新たにオリジナルブランド(いわゆるOEM)の商品を生産、販売する方にとって、非常に価値のあるものとなっています。
ただ、Amazonブランド登録をするために必要となってくるのが商標権(商標登録)になります。
このAmazonブランド登録のためだと思いますが、近年、特許庁への商標登録出願の件数が急増しているようで、この流れに乗らない手はないかと思います。
まとめ
以上に商標権(商標登録)とは何であるか、以下の項目に沿って説明してきました。
- (1)商標権(文字商標とロゴ商標)の例
- (2)商標と区分、指定商品(指定役務)について
- (3)商標権(商標登録)があると何ができるのか?
- (4)商標権(商標登録)の侵害とは?
- (5)Amazonブランド登録について
特に最後に記載したAmazonブランド登録は非常にメリットが大きいので、皆様がメーカー様であるとか、OEMをされている(あるいは検討中)であれば、おすすめします。
なお、弊社の弁理士の方で、商標登録出願の代理、またAmazonブランド登録のサポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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