以下、桜ジャパンプロダクツ株式会社の弁理士ヒロが(1)商標登録出願から(7)商標登録までの手続きの流れについて説明します。
(1)商標登録出願
まず商標登録を受けたい(商標権が欲しい)人、または会社(ここの例では日清食品ホールディングス)は、商標と区分と指定商品(または指定役務)を決めて、日本特許庁に対して商標登録出願を行う必要があります。
商標には文字商標とロゴ商標とがありますが、ここでは日清食品ホールディングスのカレーメシの文字商標の商標権(商標登録)を例に説明します。
カレーメシの文字商標の商標権(商標登録)
上記出願では日清食品ホールディングスが出願人となって、以下のように「カレーメシ」の文字商標で、区分を第29類と第30類を選択し、
第29類の指定商品から「即席カレー,レトルトカレー,カレーのもと」を選択し、
また第30類の指定商品から「カレーを加味した即席米飯,カレーを加味した調理済み冷凍米飯,カレーを加味した冷凍米飯」を選択しています。
そして弁理士を代理人として、2019/2/19に日本特許庁に対して商標登録出願を行っていますね。
必ずしも弁理士を代理人とする必要はないのですが、ここで説明しているように商標登録出願は複雑です。
コスト削減のためにご自身で商標登録出願をすることは可能だとは思いますが、思わぬ拒絶理由通知を受けて、その対応で余計な時間がかかる、あるいは商標登録を受けることができなくなるおそれがあります。
そのため、時間とコストの節約のためにも弁理士を代理人とすることをおすすめします。
なお、商標登録出願が日本特許庁に受理されると、出願番号が付与され、上記出願の出願番号は商願2019-26838です。
この出願番号以外に上記出願が公開された際に公開番号(商標公開2019-026838)が付与されますが、これは出願番号と同じ番号になります。
また、上記出願の審査の結果、商標登録されることになると、登録番号(第6198189号)が付与されることになります。
ちなみに商標出願にかかる特許庁費用は3,400円+(区分数×8,600円)です。
上記の日清食品ホールディングスの出願の場合には区分数は第29類と第30類の2つなので、
3,400円+(2×8,600円)=20,600円
が特許庁費用になります。
これに弁理士に出願代理を依頼すると、弁理士の手数料が別途、発生します。
もし弊社の弁理士にご依頼頂いたとすると、弁理士の出願手数料は1区分で19,800円(税込み)、2区分以降は1区分毎にプラス10,000円(税込み)で承っております。
この出願手数料は弁理士業界の中でも最安値だと思います。
ですので、上記の日清食品ホールディングスの出願の場合には区分数は第29類と第30類の2つなので、弊社弁理士の手数料は29,800円(税込み)となります。
この出願時に区分をどうするか、つまり指定商品(または指定役務)に何を選ぶかは、商標登録の査定の後に登録料を特許庁に支払う必要があるのですが、この登録料の金額が区分数によって大きく変わります(登録料=区分数×32,900円)。
どの指定商品(または指定役務)を選ぶか、つまりどの指定商品(または指定役務)を商標権で守りたいのか、は皆様のビジネス形態によって変わります。
指定商品(または指定役務)の選択を間違えると、意味の無い商標権を取得することにもなりかねないため、この点についても、やはり専門家である弁理士と相談することをおすすめします。
(2)早期審査請求
出願人(日清食品ホールディングス)は上記出願を行った後の2019/02/22に代理人(弁理士)を介して、特許庁に対して早期審査請求の手続きを行っています。
商標早期審査・早期審理の概要
商標登録出願を行ってから商標登録を受けるまでの期間ですが、大体、半年から1年程度かかります。
なお、出願した商標の類似商標が審査で見つかったとか、商標登録の条件をクリアできない場合、特許庁審査官から拒絶理由通知というものが出願人に送られます。
この拒絶理由通知を受領すると、商標登録を受けるまでの期間がさらに伸び、最悪、商標登録を受けることができない、ということもあり得ます。
商品の生産開始時期や販売時期が迫っているなど、至急、商標登録(商標権)が必要な状況って、ありますよね。
おそらく出願人(日清食品ホールディングス)もそのような状況であった(商標登録まで1年も待っていられない)ため、早期審査請求の手続きを行ったのだと考えられます。
早期審査の条件ですが、上記特許庁のウェブサイトに記載の通り、簡単に言うと、出願人が出願商標を既に使用している(使用の準備を相当程度、進めていることを含む)ことが条件になります。
この「使用の準備を相当程度、進めている」というのがどのような準備をしていることを言うのかが少々、あいまいなのですが、これを早期審査請求の際にいかに説明するかが弁理士の腕の見せ所と言えます。
具体的には「早期審査に関する事情説明書」という書類に、出願人が何の商品に出願商標をどのように使用する予定で、現在はどのような状況なのか、説明することになります。
これを読んだ特許庁の審査官が「近い将来、出願人は出願商標を使用する」と納得して頂けたら、早期審査の対象として審査してくれて、約2カ月でその審査結果を知らせてくれるというものです。
(3)拒絶理由通知書
拒絶理由通知とは、特許庁の審査官が商標登録出願を審査した結果、「この出願は、〇〇という拒絶理由により商標登録することはできないな」と判断した場合に、出願人に通知されるものです。
拒絶理由には様々な理由があるので、ここでは詳細は説明しませんが、代表的なもので、先に出願された商標登録と、今回、出願した商標とが類似である、というものがあります。
要するに、先に出願された類似商標があった、ということですね。
なお、上記したカレーメシの文字商標の商標権(商標登録)の商標登録出願には2019/05/07に以下の拒絶理由通知が通知されています。
拒絶理由通知
実は商標登録出願に拒絶理由があるかどうかは、出願の商標だけでは決まらず、商標と出願の際に指定する指定商品(または指定役務)とによって決まります。
上記拒絶理由通知に記載のように、指定商品がレトルトカレーで、これに「カレ-メシ」の商標は普通に用いられるものだから、このような商標を商標登録する(つまり商標権を与える)わけにはいかない、というものです。
たとえばどこかの企業X社が指定商品をレトルトカレー、「カレーライス」の商標で商標登録出願したとして、これが商標登録された(つまり商標権が与えられた)としましょう。
すると、元々、「カレーライス」の文字を記載してレトルトカレーを販売していた他の企業Y社のレトルトカレーの販売行為が突然、その「カレーライス」の商標の商標権者となったX社の商標権の侵害になってしまいます。
これはおかしいですよね?
というわけで、その指定商品(上記の例ならレトルトカレー)に対して、普通に用いられる商標(上記の例ならカレーライス)は商標登録を受けられないことになっていて、逆にそういう商標登録出願には拒絶理由があるということになります。
なお、この拒絶理由通知を受けたら、商標登録を受けることができないかというと、そうではありません。
この拒絶理由通知を受けた出願人は商標登録を受けることができるように、出願した商標や指定商品(または指定役務)の補正をするための手続補正書を提出することができます。
また、このとき審査官に意見書を提出して、「こういう理由で本商標登録出願は商標登録を受けることができる」という旨の主張をする機会が与えられます。
この手続補正書や意見書の提出は、拒絶理由通知の発送日から40日以内と期限が決まっていて、これを過ぎると補正や意見書を提出することができず、拒絶査定(※要は拒絶の決定)というものが通知されてしまうので、注意が必要です。
(4) 手続補正書と意見書を提出
拒絶理由通知に対しては上記したように出願した商標や指定商品(または指定役務)の補正をすることができます。
出願人(日清食品ホールディングス)の代理人(弁理士)は拒絶理由通知に対し2019/07/16に、以下の手続補正書を提出して、指定商品を補正するとともに、意見書を提出して、「〇〇という理由で審査官の拒絶理由は妥当でないため商標登録をお願いします。」ということを審査官に訴えています。
日清食品の手続補正書
日清食品の意見書
正直、指定商品がレトルトカレーで、これに「カレ-メシ」の商標は普通に用いられるものだから、このような商標を商標登録する(つまり商標権を与える)わけにはいかない、というこの拒絶理由はなかなか厳しい方だと思います。
ただ代理人(弁理士)としてはそれであきらめるわけにはいかず、そもそもこの拒絶理由通知は出願前から想定されたものだと思います。
また、上記の意見書に示すように、いかに「カレ-メシ」の商標が指定商品(レトルトカレー)に普通に用いられるものではない(※つまり拒絶理由は無い)ということを、審査官が納得できるように説得力のある意見書を作成するかが弁理士の腕の見せ所になります。
なお、この拒絶理由通知の例では違いますが、指定商品の一部を削除したり修正する補正を行う(手続補正書を提出する)ことで、拒絶理由が解消することもあります。
このように拒絶理由通知への対応方法は拒絶理由の内容によって様々なので、もしご自身で出願手続きをおこなった商標登録出願に対し、拒絶理由通知を受けたら、弁理士に相談することをおすすめします。
もちろん弊社の弁理士の方でも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
ただし、上記したように、手続補正書や意見書の提出は、拒絶理由通知の発送日から40日以内と期限が決まっているので、拒絶理由通知を受けたら、なるべくお早めにご相談されることが望ましいです。
(5)登録査定
拒絶理由通知に対して出願人が提出した手続補正書と意見書を審査官が読んで、拒絶理由は無くなったと判断すると、商標登録出願に対し、商標登録の査定をします。
上記の日清食品ホールディングスの出願に対しては上記した手続補正書と意見書を提出した結果、2019/10/11に審査官が商標登録の査定をしています。
つまり、上記した手続補正書と意見書を読んだ結果、、「〇〇という理由で審査官の拒絶理由は妥当でないため商標登録をお願いします。」という出願人(代理人)の主張に納得して同意したため、商標登録OKと判断したということです。
(6)登録料納付
商標登録をしたければ(つまり商標権を取得したければ)、出願人は(5)の登録査定があった日から30日以内に特許庁に登録料の納付をしなければなりません。
上記の日清食品ホールディングスの出願に対しては2019/10/11に商標登録があって、2019/11/06に登録料の納付をしています。
特許庁に支払う商標の登録料は区分数×32,900円なので、上記の日清食品ホールディングスの出願であれば、区分数2×32,900円=65,800円となります。
なので区分数を増やすと、商標権でカバーできる指定商品(または指定役務)を増やすことができますが、その分、登録料が高くなります。
(1)商標登録出願で説明したように出願時に、皆様のビジネス形態に応じて決まるカバーすべき指定商品(または指定役務)と、指定商品(または指定役務)によって決まる区分数に応じた登録料などの特許庁費用(及び弁理士手数料)と、を考慮して、区分数をどうするか、つまり指定商品(または指定役務)をどうするか決めるのが重要ということです。
(7)商標登録
登録料を特許庁に納付すると、2週間程度で商標登録がなされます。
つまり、商標登録出願した商標に対して登録番号が付与されます。
上記の日清食品ホールディングスの出願に対しては2019/11/06に登録料の納付をしており、その後、2019/11/15に商標登録がされ、商標登録第6198189号という登録番号が付与されています。
これにより日清食品ホールディングスは出願人から商標登録第6198189号の商標権の権利者(商標権者)となるわけです。
もし皆様がある商品やサービスについて商標権(商標登録)を有していると商標権者が何ができるかについては、以下に詳細を説明しています。
簡単に言うと、第三者がその登録商標(または類似商標)をその商品やサービス(または類似商品や類似サービス)に対して使用したとすると、その行為は皆様の商標権の侵害となるため、皆様はその第三者の使用行為をやめさせることができるという強力な効果が得られるものです。
まとめ
以上、(1)商標登録出願から(7)商標登録までの手続きの流れについて説明してきました。
複雑ですよね。。
ただこれでも簡素化したつもりでして、実際にはこれに拒絶査定とか、拒絶査定不服審判とか、が追加されるパターンもあります。
逆に(3)拒絶理由通知が一度もないまま、(5)登録査定となることも多いです。
このためには出願前に類似商標が無いことを確認のうえ、正しく指定商品(指定役務)を選択することが大事です。
なかなかこの辺はご自身で対応するのが難しいところなので、ぜひお気軽に弊社弁理士へご相談ください(ご相談は無料です)。
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